セキュリティ・キャンプに参加したい!

初出: TechReport 2017.08

みなさんは「セキュリティ・キャンプ」をご存知ですか?

セキュリティ・キャンプは、情報セキュリティおよびプログラミングに関する高度な教育を若者に対して実施することで、いわゆる「高度 IT 人材」の発掘と育成を目指そうという事業です。2004年からスタートし、それから名前12や主催組織が紆余曲折ありましたが、2012年からは現在の民間企業などで構成されるセキュリティ・キャンプ実施協議会(2018年より一般社団法人セキュリティ・キャンプ協議会に組織変更)と、経済産業省系の独立行政法人情報処理推進機構(みんなだいすき IPA)の共同主催という形をとっています。

セキュリティ・キャンプといってもアウトドアでキャンプをするわけではありません。中心となる全国大会を始めとした様々なイベントが行われ、それらを総称してセキュリティ・キャンプと呼んでいます。

この記事では、セキュリティ・キャンプについて紹介します13。

セキュリティ・キャンプ 全国大会

毎年8月に東京近辺で行われている4泊5日の合宿イベントで、一般に「セキュリティ・キャンプ」と言った場合にはこの全国大会を指します。だいたい夏コミの直前か直後の週で金曜~土曜が被ることもあります。今年(2017年)は幸い夏コミ明けの月曜日からのようです。

この後に紹介するように内容の濃さもさることながら、会場までの旅費や当日の宿泊費など受講に関する費用をまるっと出してもらえるということもあり、全国津々浦々から参加者が毎年集うのが全国大会の特徴です。また、5日間のうち中3日間は朝から晩まで講義ということで、こちらも全国津々浦々からセキュリティあるいはコンピュータサイエンスにおける様々な分野の専門家を50人以上も集めています。総勢100人以上の専門家と専門家の卵が全力でぶつかる場として、ドラゴンボールの「精神と時の部屋」のように言われることもあります14。

参加者は4月から5月末まで募集され、そこから応募内容に基づいて選考されます。ここ数年は50人程度でしたが、2017年から80人程度に増員されました。それに伴い、会場も幕張から府中に移動になっています。選考通過者全体では平均年齢が上がっている一方で、2017年には初めて小学生が選考を通過しました(しかも2名!!)。

2017年から50人前後から80人前後に大幅に人数が増えたことに伴い、「選択コース」と「集中コース」に大きく分けて実施されることになりました。

選択コース

この数年「トラック制」として実施されていた全国大会の形式をそのまま引き継ぐのが、この選択コースです。

様々な分野の講義(3~4時間)が5つのトラックで並行して用意され、参加者はそこからどの講義を受講するか希望することができます(部屋や講義体制の都合で必ずしも希望通りにならないこともあります……すみません……)。2枠もしくは3枠を連続で確保し、食事を挟んで最大11時間ぶっ続けという「選択ってなんだっけ」という講義もあります。

自分が既に得意な分野の講義ばかりを選んでも良いし、あまりよく知らなかった分野に手を出してみるきっかけとしてザッピングするのも良いです。参考までに、2017年の二日目の時間割を紹介します15。様々な分野の講義があるなと感じていただければと思います。

セキュリティ・キャンプ 全国大会2017 タイムテーブル

朝の8時半(実際にはその前に朝食)には講義開始して夜の22時まで詰め込まれているというあたりも「合宿」ならではというところですね(白目)。

これらの自分で選んだ専門講義のほか、全員が共通で参加する全体講義として「セキュリティ基礎」「特別講演」「BoF」「企業プレゼンテーション」などがあります。1日目・5日目は全体講義のみで、中三日は集中講義がメインです。

講義の他にも少人数のグループに分けられて課題のテーマについて5日間で議論する「グループワーク」もまた全国大会の重要なイベントです。講義毎に参加者が入れ替わる選択コースで、ずっと同じグループで活動ができる貴重な機会なので有効活用して下さい。ただしグループワークのために用意されている時間は限られ、いかに健康で文化的な生活を保ったままグループワークの準備を進めるかも試されます。

それぞれの講義には、講師のほか2名前後の「チューター」が付きます。彼らはセキュリティ・キャンプの卒業生であり、講師よりも受講者に近い立場として、講義だけでなく5日間の受講者の生活を朝から晩まで様々な面から支援してくれます。

集中コース

2017年から新しく新設された集中コースでは、3つのテーマに10人程度の参加者が3日間集中して取り組みます。初回は「言語や OS を自作しよう」「セキュアな CPU を自作しよう」「Linux 向けマルウェア対策ソフトウェアを作ろう」という3つのテーマが用意されています。

共通講義やグループワークなどは選択コースと同一とはいえ、一つのテーマを突き詰めていく、いわばもう一つの全国大会が何を成し遂げるのか、今から楽しみです。

セキュリティ・キャンプ 地方大会

選考倍率が高い全国大会だけでなく様々な機会を提供するため、「セキュリティ・ミニキャンプ in ○○」という地方大会を各地域で実施しています16。

誰でも参加が可能な「一般講座」と、25歳以下の学生のみ参加できる「専門講座」の二日間開催という形態が多く、一般講座の存在が全国大会と最も異なるところです。また、地元の参加者を想定していることもあり、交通費や宿泊費については自己負担であったり一部負担であったりすることもあります。

2016年度には9回実施され、2017年度にも10回予定されています。まだまだ C92時点で募集中の宮崎・山梨を含めて8回応募する機会がありますので、興味を持った方は是非応募してみて下さい。比較的応募者が地域に閉じていることもあり、全国大会と比較して応募倍率などかなり敷居が低いです。2016年度の地方大会の様子は、@IT にて連続連載17が組まれていたので、そちらを読むとどんな雰囲気か判ると思います。

その他のセキュリティ・キャンプ活動

セキュリティ・コアキャンプ

2017年全国大会と合わせて、全国大会の OB/OG 向けの成長機会として新しく実施することになった枠組みです。かなりキャッチーなタイトルが並んでいるので紹介しておきます18。

『中津留勇マルウェア解析 LIVE 2017~CAN’T STOP ANALYSIS~』『日帰りバグハンター合宿』『キャンプ講師になるためのコンテンツハッカソン』ちょっと尖りすぎて、応募者ドン引きで出足が悪かったという笑い話もあったりなかったりしました。

セキュリティ・ジュニアキャンプ

全国大会などは22歳以下の学生が対象ですが、さらに若い年代向けのイベントとして中学生以下を対象とする「ジュニアキャンプ」を高知で毎年実施しています。

最近はロボットカーをテーマに、セキュリティを絡めて二日間で RaspberryPi ベースのロボットカーを実際にコースで走らせるところまで手を動かしてもらうという内容になっています。後半は、互いの参加者のロボットカーに「いたずら」をするという擬似的な攻守合戦のような形式で、コンピュータにおけるセキュリティの重要さ、どのような攻撃がありそれからどうやって守るかを、身をもって体験しています。

セキュリティ・キャンプアワード

セキュリティ・キャンプ全国大会修了生のその後の活動を発表してもらい、修了生同士の活躍を互いに強化していくための枠組みとして、年一回の「キャンプアワード」という場を用意しています。

毎年50人前後の「キャンパー」を排出する全国大会ですが、その中でも先進的な活動を継続して続けている人のうち、一次審査を通過した5人がその場で最終プレゼンを行い、最終的な賞を授与されます。2017年3月に行われたキャンプアワードの様子が@IT で記事19になっています。

正直めっちゃレベル高いです。

GCC:Global Cybersecurity Camp

2018年よりコアキャンプを発展する形で実施されるのが、この Global Cybersecurity Camp──通称 GCC です。「国籍・人種を超えた専門知識のあるグローバル人材の育成」と「国境を超えた友情とゆるやかなコミュニティの形成」を目的として開催されます。日本のほか韓国、台湾、シンガポールにおける若手エンジニアを対象に、4カ国の講師がお互いにセキュリティ技術に関する講義を行う、まさにグローバルなセキュリティ・キャンプです。

応募対象は25歳以下のセキュリティ・キャンプ全国大会の修了生20で、日本から7~8名が選考されます。参加費用や交通費・宿泊費などは全て無料です。

セキュリティ・キャンプに参加しよう

セキュリティ・キャンプに参加するにはいくつかの方法があります。

正攻法で全国大会に応募する

あなたが2019年3月31日時点で22歳以下の学生であれば、来年度の全国大会に応募するのが一番の近道です。参加費用を全て負担してもらうことができ、手厚い講師陣による熱い講義をうけることができます。

その一方で、全国大会は応募倍率も高く、その応募課題のレベルも高いのですが、きちんと努力をしてそれを表現できれば通過できるのも事実です。講師陣・修了生からのメッセージ21という Togetterにまとまっているので、是非参考にしてください。

上の Togetter にも載っていますが「応募課題への回答は選考担当者とのコミュニケーション」に尽きるので、正誤を恐れず、自分が何を考えてどう手を動かしているのかを書いてください。「解答」だけを端的に書かれても、選考担当者は超能力者ではないので、どんなことを考えている人なのか判らないというのが正直なところなのです。そういう「もったいない」回答が少しでも減ればと思います。

全国大会のジュニア限定ゼミに応募する

2018年より小中学生限定のジュニア限定ゼミ(2018年は「ジュニア限定ネットワークゼミ」)が用意されました。

この枠はセキュリティ・キャンプ全国大会の中でも特別な扱いで、本来であれば全国大会の修了生は受講者としては応募できず、チューターや講師でしか再度の参加はできないのですが、このジュニア限定ゼミの修了生は、もう一度全国大会の一般受講者として応募できます。

ジュニア限定ゼミとそのほかのコースは併願も可能なので、もし自分が小中学生であれば、あるいはあなたのお子さんが小中学生であれば、チャレンジすることを強くおすすめします。

まずは地方大会に参加する

地方大会は、年齢制限が緩かったり選考倍率が低かったりと、全国大会と比べて参加しやすい傾向にあります。また、交通費をいとわなければ実施回数も多くあります。ちょうど本書が夏コミということもあり、次の全国大会の募集がある4月まで待ち遠しい方は地方大会への参加を考えてみてください。2017年度の応募結果によると選考通過者の31.7%が地方大会の参加経験者のようで、全国大会に向けたステップとして一定の成果が出ているようです。

また、一般講義については基本的に選考無しでそのまま入れるので、オトナな人は地元で地方大会が行われたときは是非お越しください。

大人のセキュリティ・キャンプ

基本的に、22歳だとか25歳だとか以下の学生のみが参加できるセキュリティ・キャンプですが、実は大人が参加する方法があります。それが、セキュリティ・キャンプ協議会への参加です。協議会は、年会費1口50万円で参加組織を募集しており、会員になると以下のような特典があります。

  1. 全国大会の見学と BoF 等への参加
  2. インタビューや取材時におけるバックボードロゴ掲示
  3. インターンシップの取り組み

そうです、普通であれば学生のみが受講できる全国大会の講義を、会員企業になると堂々と見学することができるのです。あくまで見学ということで学生同等の扱いではありませんが、5日間の研修費用と考えれば、そこで得られる学生や講師との関係構築などを含めてかなり価値が高いのでは無いでしょうか。

協議会の会員企業が増えることで、地方大会を含めた様々な仕組みの自由度が増します。是非、大人の皆様も、会員企業になって全国大会に参加していってください22。

そして2018年には、待望されていた個人メンバー(賛助会員)が設定されました。年会費10万円で全国大会や地方大会の見学が可能になります。個人で気軽に出せる金額ではありませんが、純粋に教育コンテンツとして見れば破格と思います。こちらも是非おすすめです。

おまけ

一年を通してセキュリティをテーマにしたものづくりを行う通年ハッカソン「SecHack36523」もよろしくお願いします24。