エコシステム側のエージェントサンドボックス

対象本文

第4章4.7で触れる、クラウド事業者四社の外側に広がる実行面の提供者を補います。クラウド事業者四社の比較は四社のエージェントサンドボックス、実行粒度の軸はエージェントサンドボックスの実行粒度が正本です。本エントリは、その外側——モデル提供者、開発プラットフォーム、専業の新興、エージェント製品各社——の顔ぶれと実行モデルの違いを層で読むための表です。製品推薦ではありません。

収集方法

2026年7月21日〜22日に、各社の公式ドキュメント、公式ブログ、料金ページを照合しました。OpenAI、Anthropic、Vercelの主要な主張は、抽出した主張ごとに独立した反証確認(各3票)を通しています。E2B、Daytona、Modal、Morph、Blaxel、Runloopは一次資料の逐語確認です。起動時間はすべて提供者の公称値で、測定条件が同一でないため横並びにしません。一次資料へ当たれなかった値は「既知の未知」に残しています。

現在の答え

共通方向は四社と同じです。ID付きの環境を割り当て、失効・チェックポイント・復元を提供仕様に含め、使った分だけ課金する型が、層の違いを越えて繰り返し現れます。ただし全員一致ではありません。OpenAIは失効後の復元を提供せず、ローカル実行のClaude Codeサンドボックスには課金体系自体がなく、CognitionやReplitの基盤は外販されない内製です。一方で壁材(隔離技術)の選択は四社より割れており、Firecracker、gVisor、コンテナ、OSプリミティブ、非開示が並びます。

代表サンドボックスの形
モデル提供者OpenAI、AnthropicAPIの内蔵ツール。隔離実装は非開示で、提供仕様(コンテナID、失効、課金)だけを公開
開発プラットフォームVercel、LangChain(LangSmith)microVM基盤を製品として外販。四社と同型の実行モデル
専業E2B、Daytona、Modal、Morph、Blaxel、Runloop壁材は分化。起動の速さと状態の引き継ぎ(pause、snapshot、fork)で差別化
エージェント製品Cognition、Replit、Manus自社製品のために内製、または専業を採用。一部は技術公開・OSS化

主要な提供者の実行モデルの違いです。空欄や「未確認」は一次資料で確かめられていない箇所です。

提供者主な隔離ライフサイクル出口と資格課金の読み方
OpenAI Code Interpreter非開示(公式表現は「fully sandboxed virtual machine」)20分無操作で失効。失効後は復元不可、データ破棄未確認割当メモリの段階制(1GB/4GB/16GB/64GB、20分session単位。APIのmemory_limit指定値は1g/4g/16g/64g)。2026年6月から対象sessionは分単位・最低5分
Anthropic code execution非開示のcontainer約5分の無操作でcheckpoint。container IDで30日以内は復元可外向き通信なし(遮断一択)。package追加も不可実行時間制・最低5分。月1,550時間無料、超過$0.05/container時。web search/web fetch併用時は無料
Claude CodeサンドボックスOSプリミティブ(Linux bubblewrap、macOS seatbelt)。container不使用開発者ローカルのプロセスホスト側proxy(HTTP/SOCKS5)のallowlist。資格情報はsandbox内に置かない該当なし(sandbox-runtimeとしてApache-2.0公開)
Vercel SandboxFirecracker microVM永続が既定(停止時保存+名前で再開)。snapshotとDrives(beta)。最大24時間(Pro)未確認Active CPU(I/O待ち非課金)+確保メモリ+作成回数。2026年1月GA
LangSmith SandboxesmicroVMsnapshotとcopy-on-write fork。非活動TTLと最大TTLの二段Auth Proxyが資格を外側で注入秒課金。2026年5月GA
E2BFirecracker microVMpause/resume(memory・プロセス込み)。pause中は無期限保持、resumeで連続実行制限が再開未確認Pro $150/月+vCPU・RAM秒課金。連続実行はHobby 1時間/Pro 24時間
DaytonaOCI/Docker container(VM型もあり)cold snapshot(filesystem)/hot snapshot(memory込み、VM型)。2週間未使用で非活性化課金Tier連動のegress制御。CIDR/domainのallowlistとblock-all純従量
ModalgVisor既定5分、最大24時間。超える仕事はsnapshot保存→復元を公式推奨未確認秒課金。sandbox専用単価は通常関数の約3倍
MorphVM(詳細は未確認)実行中VMを250ms未満でsnapshot/branch/restore(公称)。親VM無停止で並列分岐未確認個別見積り
BlaxelVM無操作約15秒でstandby、25ms未満で復帰(公称)。sandboxごとにMCP server内蔵未確認稼働中のみメモリ課金。standby中はsnapshot/volume保管のみ

エージェント製品層は外販ではなく内製の系譜です。CognitionはDevinの全本番を自社hypervisor(otterlink)で動かし、VMディスクのsnapshot形式blockdiffをOSS化しました(20GBで約200msと公称)。Replitはcheckpointにgit commitとdatabase状態を束ね、任意時点へ巻き戻せる基盤を公開記事で説明しています。ManusはE2Bをセルフホストし、タスクごとに隔離VMを割り当てます。この層では実行面の外部化も始まりました。CognitionのDevin Outposts(2026年7月発表)は、推論・計画をDevinのクラウドへ残したまま、コマンド実行を利用者が運用する基盤へ移します。受け皿にはCloudflareに加えて本表のModal、Daytona、E2Bが並び、専業ベンダーが「他社エージェントの実行面の受け皿」という販路を得た形です。構成の詳細はマネージド・エージェント実行基盤が正本です。

逆向きの動きも記録します。CrewAIは内蔵のコード実行ツールを廃止し、公式ドキュメントでE2BまたはModalの利用を案内します。LlamaIndexはAzure Container Apps dynamic sessionsへ委譲します。開発フレームワーク層では「サンドボックスは自前の機能ではなく、外のインフラ」という整理が進んでいます。

課金には四社側にない形が現れています。VercelのActive CPUはI/O待ちを課金せず、Anthropicはweb search併用時のコード実行を無料にします。どちらも、LLMの応答を待つ時間が長いというエージェントの実行実態を単価表へ織り込んだ設計です。

一次資料

既知の未知

変更履歴